ロウソクの火が消えるまで

日々の景色や思うこと。

いつかの光景

いつかの夏前。大学に在籍していたころに、学校から我が家へ帰る途中の道で、

途方に暮れている小学生に出会った。

見たところ2年生と4年生ぐらいの二人の男の子。

きっと兄弟。

彼らはグレーチングでふさがれた溝を覗き込みながら、なにか落としたであろう物を探していた。

木の枝を拾ってきて溝に突っ込み、かき混ぜる。

そんな光景を進行方向に遠目に眺めながら歩いていた。

少年たちが目の前に、そして通り過ぎる。

通り過ぎるまで溝をかき混ぜてたので、いたたまれなくなって声をかけた。

 

その日の朝に母親から貰った300円を溝に落としたらしい。

このことが母親にばれると叱られると、兄は涙目。弟はボーっとしてた。

そんなことならお安い御用と、ぐーちょきパン店のご主人よろしく、腕まくりをして溝蓋を外しにかかる。

が、外れない。ほんとに外れないし、そもそも私は腕っぷしが弱い。見た目の割に非力だ。

 

しかしそんなことを溝蓋に手をかけながら、涙目の兄弟に伝えることはできない。

ごめん、お兄さん力弱いから諦めて、おとなしくお母さんに怒られなさい、

なんて言えなかった。

 

今考えると彼らにも私にとってもよくない解決をしたなと思うのだけれど、

そんなことより目の前の兄弟を助けたくて普通に300円あげた。

助けて「あげた」めっちゃお節介。

でも当時の私は人助けに満足しその場を後にした。

お兄ちゃんは眩しいほどの笑顔でありがとう!!と言ってくれたし、

それが聞けただけで大満足である。

 

私も渾身のサムズアップをかざし、数十メートル歩く。

母親に怒られる危機を脱した兄弟は、今頃急いで家路についているんだろうな、

なんて思いながら振り返る。

 

目の前の自販機でコーラ二本買ってた。

めっちゃ笑った。